新米教育担当アツコ、がんばる!第15回 「あれ? ワタシ、何をすればいいの?」by平井厚子

下期になり、リーダー育成制度が立ち上がりました。

 受講者は自薦他薦合わせて8名と、目標の10名には届かなかったものの、管理職候補としては十分な人数になりました。

 「社長塾、よかったですね」とアツコさん。「そうだな。ウチくらいの規模だと、社長が自らリーダーを育成するというのは、当事者のモチベーションがあがるね」と、スギモト課長も同意見です。

 育成計画では集合研修は社長塾のみで、あとは実務経験を計画的に積んでいくための業務アサインと、受講者の独習が中心です。評価制度も、リーダーの望ましい行動を強化するような評価基準が取り入れられました。人材育成は「合わせ技一本」なのです。

 毎月の進捗報告をもらいながら、アツコさんはふと思いました。「あれ、ワタシ、何をすればいいの?」

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今回のポイント 「教育担当者の要件 ③ファシリテーション力」

「ファシリテーション」という言葉はもう、すっかりおなじみになりました。

 Wikipediaでは、「ファシリテーション(英: facilitation)は、会議等の場で、発言や参加を促したり、話の流れを整理したり、参加者の認識の一致を確認したりする行為で介入し、合意形成や相互理解をサポートすることにより、組織や参加者の活性化、協働を促進させるリーダーの持つ能力のひとつ。」と記載されています。しかしここでいう教育担当者に必要なファシリテーション力とは、もっと広義なものを指しています。

 ファシリテーションを行う人をファシリテーターといい、もとの意味は「促進者」です。何を促進するのか、それは「組織の学習」です。教育担当者に必要なファシリテーション能力とは、こちらの意味のほうが重要なのです。

 ミオツクシ株式会社ではリーダー育成制度が動き始めました。「合わせ技一本」の育成ですから、集合研修は1講座だけで、あとはOJTと独習、評価制度による行動強化が主な育成手段となっています。では、教育担当者の仕事はもう終わったのでしょうか。

 とんでもありません。動き始めた社内の状況を把握し、育成がより促進されるように、止まらないように上司や当事者に働きかけ、必要なら介入し、育成計画を順調に進めていくことが、教育担当者の役割です。

 例えばOJTです。以前のように見通しが立てにくい環境下で、計画どおりの業務をアサインすることは容易ではないでしょう。段階を踏んで開発計画作成スキルを習得するような制度設計にしてあっても、動き始めたらそんなにうまく業務アサインはできないかもしれません。状況によっては急遽集合研修でカバーする必要があるかもしれません。

 また、意欲をもって始めた受講者が、多忙のためモチベーションを下げることもあるかもしれません。そんなときは上司と連携しながら、教育担当者が面談するなどの介入が効果的な場合もあります。

 教育担当者の仕事は集合研修だけではありません。組織が成長するための学習を促進していくことが、より重要な仕事なのです。

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 アツコさんの動きが変わりました。ダイモン社長の承認をいただいて、毎月一回、全員の課長と面談する機会をもちました。そこで課長が抱えている困りごとにネガティブ・フィードバックが共通していることに気づき、アサクラさんと課長とのグループカウンセリングを設定しました。

アサクラさんはアサーティブなコミュニケーションについて情報提供し、ネガティブ・フィードバックのコツを伝え、練習のロープレを行いました。

「グループ・カウンセリングって何だと思ったけど、なかなかいいね」とスギモト課長も評価しているように、課長の職場マネジメントの困りごとを解決する議論・練習の場として定着しつつあります。

「動き出してからもワタシの仕事はたくさんあるんですね」というアツコさんに、アサクラさんは「あたりまえじゃない」と、珍しく大笑いしました。

     (続く)

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この記事を書いたキャリアコンサルタント

平井 厚子
平井 厚子
IT企業で25年人材育成に取り組んできました。その後就職支援で現実の労働市場に直面して視野を広げ、会社側の視点と労働者側の視点とニーズの両方を肌で感じて自分の中に取り込めたと思います。
働き方改革は従業員の能力開発、仕事の仕組みの見直しを伴ってこそ、実のあるものになります。ぜひ人材育成の視点からお手伝いさせてください。

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