新米教育担当アツコ、がんばる! 第13回 「社長塾を作りましょう!」by平井厚子

「なるほど、ミオツクシのリーダーは全員がこの研修を受けて意思決定すると言うことだな」
「そうです。その研修をぜひダイモン社長自ら講師を担当いただきたいんです。 」
アツコさんは何回目かの水を飲んで、続けます。
「今回のプロジェクトで、ミオツクシのリーダー像はできました。本や、よその事例ではなく、社内にヒアリングして、現場とありたい姿から作り出したリーダー像です。それを直接社長から語っていただいて、納得してリーダーになってほしいんです。」
◆◆◆
今回のポイント 「納得して決める」
「職業能力開発促進法」をご存じでしょうか。この法律には、以下の2点が盛り込まれています。
- 労働者自身が自発的に職業能力の開発・向上に取り組まなければならない。
- 事業主は、労働者が自ら職業能力の開発・向上に対する目標を立て、そのための能力開発を支援することが努力義務である。
つまり、「職業能力を開発・向上させる責任は労働者にあり、事業主はそれを支援する役割である」ことが、明確に規定されているのです。これを「キャリアのオーナーシップが労働者にある」と言ったりします。今までの多くの日本企業とは反対の考え方です。労働者も事業主もお互いに何をどうしたらよいのか、手探りの状態といえます。
今回アサクラさんは、会社を取り巻く環境や、会社がリーダーに何を期待しているのかを、ダイモン社長が直接リーダー候補者に語りかける場を設定しました。そこで候補者が「自分にとってリーダーの役割を引き受けることがどんな意味があるのか」を考えて、納得したうえでリーダーを引き受けるステップを踏もうとしたのです。
この「納得」がこれからのキーワードです。
今まではとにかく会社の指示に従っていれば雇用は守られ、給料も年功賃金で上がっていきました。しかし昨年、経団連・中西宏明会長、トヨタ自動車・豊田章男社長が相次いで「終身雇用継続の限界」に言及したように、状況は大きく急速に変わっています。
会社は社員に何をしてほしいのか、その結果社員は何を得るのか。いままで暗黙の了解だったことを明示的に伝えることが会社の責任、自分で納得して決めることが社員の責任。会社と社員のコミュニケーションも大きく変わります。
◆◆◆

「ダイモン社長の承認をいただきました!」アツコさんは大喜びでアサクラさんに電話しています。電話の向こうのアサクラさんからも、ほっとした空気が伝わってきます。
「下期から育成システムを動かすとして、さっそくスケジューリングですね」
「そうね、社内への伝え方も十分作戦をたてないと。」
「アサクラさん、次は明後日来社ですよね、じゃあそれまでに私がやっておくことは・・・」
アツコさんはますます忙しくなりました。
人材育成についてのご相談は、お問い合せフォームから平井宛にお気軽にぜひどうぞ!
この記事を書いたキャリアコンサルタント

-
IT企業で25年人材育成に取り組んできました。その後就職支援で現実の労働市場に直面して視野を広げ、会社側の視点と労働者側の視点とニーズの両方を肌で感じて自分の中に取り込めたと思います。
働き方改革は従業員の能力開発、仕事の仕組みの見直しを伴ってこそ、実のあるものになります。ぜひ人材育成の視点からお手伝いさせてください。