新米教育担当アツコ、がんばる! 第10回 「これも一種の「仕分け」ってヤツ??」 by 平井厚子

アツコさんとアサクラさんのプロジェクトに、新しく業務課のスギモト課長が加わりました。業務課は売上管理・工程管理・物流管理・資材在庫管理や年度計画の作成などを担当しているので全社の業務を把握しています。今後具体的な教育内容の検討に助言いただくために、ダイモン社長が手配くださったのでした。
ここまでの状況をスギモト課長と共有して、アサクラさんが次の作業を説明しました。
「育成目標の達成は集合研修だけではできません。その切り分けをするには、望ましい行動をもっと具体的にしていく必要があるんです。」

今回のポイント 「具体的な育成方法を決める」
例えば第8回でみた企画書の例では、リーダーに期待するパフォーマンス・行動で、次の内容がありました。
「10名程度の部下を預かり、成形・加工・検査デリバリーまでの製造工程を2〜3本並行してマネジメントできる。
・製造計画書が書ける (以下略)
「製造計画書が書ける」ためにその前段階ではどんなことができていないといけないかを、ブレークダウンします。例えば、
製造計画書が書けるためには、
①製造の全工程を経験している。
②「製造計画作成規程」を理解している。
③製造計画書の一部を書いたことがある。
④システムのテンプレートへの入力ができる。
「製造の全工程を経験している」は実務で経験するしかありません。
「「製造計画作成規程」を理解している」は、規程がネット等で閲覧できる場合は、集合研修でなくても自習形式でもできるかもしれません。
「製造計画書の一部を書いたことがある」は実務で経験させるのがよさそうです。
「システムのテンプレートへの入力ができる」も、新人なら集合研修でシステムの使い方を教えるのが効率的ですが、リーダー候補ならここまでに習得しているスキルであり、この段階では教育ニーズにはなりません。
したがって「製造計画書が書ける」の育成方法を決めるなら、このような内容が考えられます。
- 要件1)製造の全工程を経験している → 育成方法)ジョブローテーションと職務拡大で必要な実務経験を満たす
- 要件2)「製造計画作成規程」を理解している → 育成方法)社内ネットで規程を自習したあと所属プロジェクト以外の製造計画書を10件読み、所定の確認テストに解答して提出する
- 要件3)製造計画書の一部を書いたことがある → 育成方法)まだ書いたことのない者は実務で経験させる
- 要件4)システムのテンプレートへの入力ができる → 育成方法)ここまでの業務で習得すべきスキル
そして、達成目標は「以上を修了したうえで管理職の指導のもとで、実際の計画書を書ける」こととなります。
同様に他の項目もブレークダウンして、適切な育成方法におとしていきます。結果として集合研修が適切な場合もありますし、社内ルールの変更や上位者への教育ニーズがでてくる場合もあります。それらを切り分けて、教育で解決できることとできないことを明らかにするのです。

「なるほど、行動表現にすることで達成状態がイメージできるから、具体的な育成方法も浮かんでくるんですね。」アツコさんはアサクラさんの言うことが、だんだんわかりかけてきました。
「そうなの。「ミオツクシのリーダーは何ができないといけないのか」をはっきりさせないと、ミオツクシの育成はできないのね。大変な作業だけど、最も重要なところなんです」と、アサクラさんがアツコさんとスギモト課長に言いました。
(続く)
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この記事を書いたキャリアコンサルタント

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IT企業で25年人材育成に取り組んできました。その後就職支援で現実の労働市場に直面して視野を広げ、会社側の視点と労働者側の視点とニーズの両方を肌で感じて自分の中に取り込めたと思います。
働き方改革は従業員の能力開発、仕事の仕組みの見直しを伴ってこそ、実のあるものになります。ぜひ人材育成の視点からお手伝いさせてください。