働きがいのある組織(職場)をつくる(7)     職場が活性化した実際の事例 by 井手幸史

これまでの回で、私が人の育成や組織の育成をとおして多くの人を見てきた経験から、生き生きと働ける活気のある職場で多く見られる一人ひとりの特徴、メンバー間の関係性の特徴、そのような職場での上司のあり方の特徴、組織全体の特徴について、そしてそれらの間の好い循環のきっかけ作りについて見てきました。目次は末尾を参照ください。

今回は、少し前の事例ですが、実際にあった最も顕著な事例を通して、職場の活力が不十分な状態から劇的に活性化し一人ひとりも職場も大きく成長した例をご紹介します。

K社は社員数約250人のソフトウェア開発会社で、その中の約20人からなるプロジェクトが舞台です。中心となるT課長は、K社の親会社にいるときに、私とともに問題プロジェクトの立て直しに当たり、試行錯誤しながら立て直しに成功した実績を買われ、今回のプロジェクトの立て直しのためにK社に出向しました。

 このプロジェクトは企業間取引データ交換用アプリの開発をしていたのですが、品質は劣悪、納期も守れない開発しかできないチームでした。それまでに二人のマネジャーが入れ替わりで立て直しをしようとして、さらに状況を悪くしていました。そのマネジャーに替わって、全く異分野でソフトウェア開発をしてきたT課長が、前任のマネジャーから「スキルの低いメンバーが集まっていて、思いどおりの仕事をしてくれないから大変だと思うがよろしく」の言葉とともにプロジェクトマネジャーを引継ぎました。

一人ひとりの面談 

T課長が最初にしたことは、メンバー全員一人ひとりとの面談でした。一人ひとりの状況、その状況をどう思っているかなどを聞きましたが、疲弊感を見せながら出てきたのは、口をそろえるかのように「前々任マネジャーに指示されたとおりにやりましたが、それがいけなかったのです。」という趣旨の言葉ばかりでした。確か三度目の面談のときに、指示されたときの気持ちを語ってくれる人が出始めました。「別のやり方の方がいいのではないかと思った」が、言えなかったし、そのこと自体を長い間忘れていたようでした。そういう声が出始めると、多くのメンバーが、「ここはこのままではこうまずい」「あそこはこういうやり方にしたかった」といった思いを封印してきたことが分かってきました。山のように出てきた意見は、最初は一人ひとりバラバラで、全体では一貫せず、相互に両立しないものもあるように見えました。T課長自身は内容に精通していなかったものの、一人ひとりにはしっかりとした考えがあるように見え、学ぶところが多くありました。

職場メンバー間の対話

T課長は、そのメンバーたちの思いを一覧にまとめ、全員が俯瞰できるようにするとともに、関連する思いを持った同士で対話をする場を作るように促しました。メンバーの一人が進行役を買って出たのでT課長は進行を任せました。最初こそお互い「そんなこと思っていたのか」と他の人の思いの違いの大きさに驚いていましたが、対話を繰り返しているうちに思いは次第に統合され整合するようになり、「私たちはこうしたい」という自律的意思が形作られてきました。

自律的な実行へ

そして、T課長のひと押しで、自律的に実行に移すことができるようになりました。 この自律的意思を実行に移すことを繰り返しているうちに、メンバー間の協力関係がうまくつながった感覚が産まれ、どんどん良い方向に回っていくようになりました。「私たちはこうしたい」の思いも成長して行き、半年後には人並みの開発ができるチームになりました。一人ひとりも持っていたスキルを活かし合って成長感も得られ、二年後には他のチームよりはるかに品質の良いものを納期どおりに開発できるチームになりました。その後の大規模な開発では、出荷後お客様先でのトラブルゼロという、それ以前には考えられなかったことまでできるようになっていました。

 

 経緯の概略は以上のとおりです。
 次回以降、補足を交えながら解説をしていきます。

 組織活性化についてのご意見、ご要望、お問い合わせは、お問い合せフォームから井手宛にお気軽に。

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この記事を書いたキャリアコンサルタント

井手 幸史
井手 幸史
一人ひとりの中の意欲を引き出し、職場メンバー間の連携で組織を活性化し、そこからさらに一人ひとりの成長に繋ぐ、一人ひとりと組織との間の好循環を産み出す仕組み作りのお手伝いをいたします。

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