新米教育担当アツコ、がんばる! 第7回 ウチの育成目標は、教育担当のワタシがつくる!by 平井厚子
これまでのお話 第1回/第2回/第3回/第4回/第5回/第6回
インタビューのまとめを印刷すると到底A3には収まらず、A3で2×2のポスター印刷をして貼りあわせて、やっと全ての意見が読めるようになりました。アツコさんはこれも隅々まで読んで頭にいれました。
(アサクラさん早くこないかな。どんな目標にするのか教えてもらお♪)
しかし来社したアサクラさんは、キッパリと言いました。
「ここはミオツクシのリーダー像をつくるフェーズなの。手順を教えて考えるサポートはできるけど、アウトプットを作るのはあくまでもアツコさん、あなたなのよ。」
今回のポイント 「教育担当者の要件 ②目標設定能力」
ここでいう目標設定能力とは、
①会社のこれからのありたい姿を踏まえて、
②リーダーつまり次期管理職候補者の人材像を作り、
③現状に働く抑止力と推進力をみつける。
という能力です。
抑止力と推進力は聞きなれないかもしれません。ありたい人材像の実現に向けて変革を起こして実現を推進する方向に働いていること、逆にありたい人材像の実現を阻む方向に働いていることを現状からさぐるのです。例えば「リーダー育成」では「もっとスキルを上げ能力を発揮したい社員が多い」は推進力、「管理職になりたくない社員が多い」は抑止力と考えられます。
このとき問題点の定義(この例でいうと「当社のリーダー育成に関する問題点」)は、あまり重視しません。経営課題を解決するリーダー像を具体化するのが目的ですから、現状の改善・改良よりもありたい姿を作り上げることをめざします。
検討の手順は以下のとおりです。
①課題について、現在起きていることを整理する。
うまくいっていること、うまくいっていないこと、課題についてのメンバーの気持ち、期待などを整理します。
②会社のありたい姿を確認する。
③ ②を踏まえて、課題になっている人物像を定義する。
最初から課題になっている側の人物像だけを考えるのではなく、どんな社員が必要かをできるだけたくさん洗い出して、それを階層や役職に振り分けて、ターゲットにしているリーダーの人物像を抽出していくと考えやすいでしょう。リーダーだけを取り上げて定義するとどんどん期待が高くなって、本来管理職に期待される役割までリーダーに取り込まれる可能性があります。
④推進力と抑止力を探る。
組織文化や風土への介入の手がかりになります。
アツコさんとアサクラさんのミーティングが始まりました。
アサクラさんは手順にそって段階ごとにやることを提示して、インタビュー同様「例えば?」「具体的には?」「そう考える理由は?」などとアツコさんの考えを引き出すように関わります。時おりヒントになりそうな過去の担当事例や他社情報を教えてくれます。アツコさんがいいアイデアをだすと、「うんうん、いいじゃない」とか「素晴らしい!」とか言って後押ししてくれます。アツコさんは「脳みそがパサパサだぁ〜、水でこねた〜い!」と頭を抱えること数度。悪戦苦闘4時間で、ふたりの前には育成目標の叩き台ができていました。
第8回に続く
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この記事を書いたキャリアコンサルタント

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IT企業で25年人材育成に取り組んできました。その後就職支援で現実の労働市場に直面して視野を広げ、会社側の視点と労働者側の視点とニーズの両方を肌で感じて自分の中に取り込めたと思います。
働き方改革は従業員の能力開発、仕事の仕組みの見直しを伴ってこそ、実のあるものになります。ぜひ人材育成の視点からお手伝いさせてください。